スゴ育児

息子育ての狂気の日々

命綱としての絆し

 無重力の危なさ

私には、一つだけ、とても重大な使命がある。
それは、
「死ぬまで生きること」
それだけ。

多分、多くを望まなければ、
人並みに働いて、
それなりに生きていける状況にあり、
仮に、何か問題があっても、
死ぬまで生きればOKなのだから、
不測の事態ももはや不測ではなく、
なんら問題ない。

その後の心配はないわけではないが、
そのときには、
感覚器も脳みそもないわけだから、
その後は知りようもないし、仕方がない。
そんな妙な潔さがあったりする。

命綱

私は、自称山から下りた仙人だ。
仙術は使えないし、不老不死でもない。
山の上から下界を眺めるわけでもなく、
1プレーヤーとして社会に身をひそめる。

私の使命は「死ぬまで生きること」、
ただ、それだけだから、
何をしてもいいし、何もしなくてもいい。
そうすると色んなことが面倒くさくなる。
息を吸うのもめんどくせぇ。

そんな仙人もとい、廃人寸前の私に、
高い負荷をふっかける者がいる。
妻子だ。

もっと美味しいものが食べたい。
いい教育を受けさせたい。
旅行にも行きたい。
人生もっと楽しみたい。

そうすると、
人並みに働くだけじゃ足りなくなる。
さて、どうしたものか。
仙人を自称していたはずが、
俗な課題が突きつけられる。

これこそが、私にとっての命綱だ。

絆と絆し

スペースシャトルから外に出て、
船外活動をするときには、
命綱は欠かせない。
無重力下では、
どこにでも行けてしまう。
そして、戻ってこれなくなる。

私はある種の無重力空間にいる。
妻子からの要求という命綱をつけて。

妻子からの要求があるからこそ、
社会で何かをしようと思う。
仮にそれが無意味であっても。

私は言わば好き好んで飼われている馬だ。
足元には、命綱としてのほだしがある。
一方、このほだしは、本当は馬の力で、
ちぎれることを知っている。
だって、本当は自由なわけだから。

私は、この切ろうと思えば切れてしまう
命綱とこれに繋がれたスペースシャトルを、
守りたいと思う。
多分この気持ちのことを絆と呼ぶんだろう。